先日のアラスカクルーズでは、ケチカン、ジュノー、そしてアイシー・ストレイト・ポイント、シトカを訪れました。
その中でも、特に印象に残った場所のひとつが、Hoonah(フーナ)という小さなまちです。
クルーズ船が寄港したIcy Strait Point(アイシー・ストレイト・ポイント)は、実際にはHoonahの近くにあるクルーズの寄港地で、そこから少し離れたところに小さな街Hoonahがあります。
Hoonahはチチャゴフ島にある人口約900人ほどの小さなコミュニティです。現在もTlingit(トリンギット)の文化が深く根付いており、Icy Strait Pointも、この土地の文化や地域の人々とのつながりを大切にした観光地として発展してきました。(Census Data)
小さな街でカヤック
私はここでカヤックを体験しました。
海はとても静かで、周囲には広大な自然が広がっています。
カヤックのインストラクターはこの街の出身の方で、パドルを漕ぎながら、Hoonahでの暮らしについていろいろな話を聞かせてくれました。
アラスカ南東部のこの地域では、本土と道路でつながっていないコミュニティも多く、物資の輸送は簡単ではありません。
そのため、私たちが普段当たり前のように利用しているスーパーや日用品店が、ここではとても貴重な存在になります。
インストラクターの方から聞いた話では、牛乳1ガロンが14ドルほどすることもあるそうです。
私が暮らしているメインランドの街では、同じ牛乳が4ドル前後で購入できることもあるので、その価格差にはとても驚きました。
もちろん商品の価格は時期や店舗によって変わりますが、「必要なものをすぐに買える」という便利さが、都市部とはまったく違うことを感じました。
医療も「訪れる」というスタイル
そして、私が特に興味深く感じたのが、この街の医療環境です。
HoonahにはHealth Centerがあり、プライマリーケアだけでなく、歯科医療も提供されています。
さらに、専門医療については、専門職が定期的に地域を訪れる「Traveling Clinics」という仕組みがあります。
実際にSEARHCのHoonah Health Centerでは、プライマリーケアだけでなく、歯科、フットケア、眼科、作業療法など、さまざまな専門分野のスタッフが日程を組んで訪問しています。(SEARHC)
つまり、都市部のように「いつでもすべての専門医療が近くにある」という環境ではありません。
必要な医療を、地域のスタッフが支えながら、専門職が定期的に訪れて提供する。
これは、人口の少ない遠隔地ならではの医療の形なのだと思いました。
特に歯科医療も、Hoonah Health Centerの中にDental Careがあり、一般歯科診療が行われています。(SEARHC)
もし大きな病院での治療が必要になったら
小さなコミュニティで暮らすということは、自然に囲まれた素晴らしい生活ができる一方で、都市部とは違った不便さもあります。
特に緊急時には、近隣の大きな医療施設への搬送が必要になる場合があります。
カヤックのインストラクターの方からも、重症の外傷など、現地で対応できないケースでは空路で他の地域へ搬送することがあると聞きました。
普段の生活ではあまり意識することのない「医療へのアクセス」というものを、ここではより身近な問題として感じました。
海の上で出会ったクジラたち
そんな話を聞きながらカヤックをしていると、海の向こうにクジラの姿が見えました。
4~5頭ほどのザトウクジラが、少し離れたところで次々と水面に現れ、
「プシューッ」
と息を吐く姿を見ることができました。
ザトウクジラは夏になると、餌が豊富なアラスカの海域へやってきます。
アラスカ州魚類野生生物局によると、夏の採餌期にはオキアミや小魚などを大量に食べ、1頭が1日に最大約1.5トンの餌を食べることもあるそうです。夏には、複数のクジラが一時的に集まって協力しながら餌を取ることもあります。(Alaska Department of Fish and Game)
実際に水上で見ると、その大きさだけでなく、「この海が彼らにとって巨大な食卓なのだ」ということを実感します。
この地域では、ザトウクジラだけでなく、シャチ、ラッコ、アシカ、そして海岸に姿を現すことのあるブラウンベアなど、さまざまな野生動物を見ることがあります。(Hoonah Whale Tours)
私が訪れた日も、カヤックのすぐ近くで自然の営みを感じることができました。
不便さを上回る、自然の豊かさ
Hoonahで過ごして感じたのは、
「便利ではないからこそ、残っているものがある」
ということでした。
人口約900人ほどの小さな街。
道路や物流、医療など、都市部と同じようにはいかないこともあります。
物価も高く、必要なものを簡単に手に入れられるとは限りません。
それでも、この土地には、都市では決して味わうことのできないものがあります。
静かな海。
深い森。
豊かな海の恵み。
この大自然そのものが、この街に暮らす人々にとって大きな魅力なのだと思いました。
そして、そこで暮らす人々の話を直接聞いたことで、私はアラスカを「美しい観光地」として見るだけではなく、自然と共に暮らしながら、限られた医療資源を地域全体で支えている人々の生活の場として見ることができました。
歯科医療も含め、私たちが普段当たり前だと思っている医療や生活の便利さは、決してどこでも同じではありません。
今回のカヤック体験は、アラスカの美しい自然を楽しむだけでなく、そんなことを考えるきっかけにもなりました。
それでは、また!