先日、チャンスがあり、以前から興味を持っていたポンペイ遺跡を訪れました。
「これが本当に2000年前の街なのか?」と首をかしげてしまうほど、当時の人々の高度な文明に驚かされました。
ポンペイではすでに、司法や役人を選ぶために選挙が行われており、民主主義的なシステムが確立されていたそうです。建築物にはシンメトリー(左右対称)の美意識が取り入れられ、食文化も豊かでした。まだトマトは古代ローマには伝わっていませんでしたが、現代のピザの原型ともいえる食べ物が存在していたといわれています。また、持ち帰り専門の食べ物屋や洗濯所など、現代にも通じる生活基盤が整っていました。
その洗濯所では、人や家畜の尿を発酵させて得られるアンモニアを、汚れを落とすための洗剤として利用していたそうです。さらに興味深いのは、そのアンモニアを歯を白くする目的でも使っていたのではないか、という説があることです。もし2000年前にすでに「アンモニアには漂白作用がある」と経験的に理解していたとすれば、驚くべき先見性といえるでしょう。ただし、アンモニアを直接歯に塗ることは歯や歯肉に強い刺激を与えるため、現代の医学では決して推奨されていません。
また、火山の噴火で亡くなったポンペイの人々の遺体からは、驚くほど健康的な歯が確認されています。その理由としては、
• 精製されていない炭水化物やフルーツ、野菜を中心とした食生活
• 砂糖をほとんど摂取せず、甘味はハチミツから得ていた
• 山が近く、飲み水に天然のフッ素が多く含まれていた
といった生活環境が挙げられます。これらの要因により、虫歯や歯周病のリスクは現代よりも少なかったと考えられます。さらに、歯が抜けた部分には動物の骨や象牙、人間の歯をはめ込み、それを金のバンドのようなもので固定する処置が行われていた痕跡も見つかっており、当時すでに歯科治療の工夫が存在していたことが分かります。
寿命や生活条件は現代とは大きく異なりますが、歯ブラシも歯磨き粉もなかった2000年前の人々が健康的な歯を維持していたという事実は、とても示唆に富んでいます。私たちも現代に生きる中で、過度な加工食品や砂糖を控え、野菜やフルーツを中心としたナチュラルな食生活を心がけることが、健康な歯を守る大きなポイントといえるでしょう。